ルシーナとソネット

若いころ、熊谷正寿氏の著書『一冊の手帳で夢は必ずかなう』に感銘を受け、革の手帳を買うことにした。購入した手帳はブラウンのFilofax。熊谷氏と同じバイブルサイズ。

悩んだのが手帳と一緒に使用するボールペン。

普通の3色ボールペンはおさまりが悪いため、いろいろと悩んだ末、黄色のボディ、金色クリップが特徴的なパイロット ルシーナにした。黒色のトップもスーツに合う。 手帳にもすぽっと収まり、ジップの開け閉めも難なくできた。

毎日ルシーナを使用していると、今まで使用していたボールペンがなんだったのかと思うほど自分にはフィットした。書き出したらとまらない。ボールペンをもつ指先から脳と繋がっている感覚がより鮮明に認識でき、思考したことをそのまま記載できる。

その後、仕事が多忙を極め、ごくわずかな自由な時間はスーツとネクタイへ傾斜していき、手帳を開くことはもちろん、自分に向かう時間も減っていった。

数年経ち、新調したスーツを受け取りに百貨店へ行った際、おしゃれな文具屋を発見。ふらり立ち寄った。

そこは伊東屋とユナイテッドアローズのコラボ店。バイヤーのセンスがとてもいい。店内を見回っていると、ショーケースにあるボールペンに目が留まった。様々な色彩の万年筆やボールペンに囲まれ、派手さがまったくないボールペン。なぜか視線が外せない。マット調の漆黒ボディ。無性に気になった。試し書きしたところ、書き味もなかなかよい。スリムな体形が新調したネクタイとも似合いそう。一目惚れした。

ただ、購入後、すぐに顧客先にて紛失してしまう。

会議室の机や椅子の下、通路など必死に探したが見つからず。後日、落とし物の届出がないか、ビルの管理センターにも確認したが届いておらず。何処に行ったのやら。パーカーのソネット・マットブラックCT。

一目惚れしたソネットには苦く、淡い思い出が残った。

これ以降、ソネットへの想いが捨てきれないものの、日々、手帳に向かう時間は増えていった。書いても書いてもなかなかインクが減らず、塗装がはがれた金色クリップのルシーナをより愛するようになったのは言うまでもない。

悩んで購入したルシーナは連れ添って10年以上。妻よりも長い。


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