壁。不確かな壁。もしこの世界に完全なものが存在するとすれば、それはこの壁ということだ。そびえたつ壁というより、ぼんやりとしている壁のようだが、むこうとこちらを分け隔てているものは確かに存在する。
それは自分の中にもあり、見えないので当然だが、捉えどころがない。
靄がかかっており、なんだかそこにありそうだが、もやっとしていて、すぐ迷子になってしまう。すぐさま凝視しても、周辺らしき輪郭がおぼろげながら認識できるくらい。はっきりと見ることはなぜかできない。
壁がなければ、飛び越える必要もなく、滝つぼに吸い込まれて時空を超える必要もない。そこには儀式のような祈りが必要であり、飛び込む勇気のようなものが大切となってくる。飛び込んだあとは、別の人生が広がっている。
それは現実においてもありえない話ではない。