特集『ビルドアップは進化しているのだろうか?』
ビルドアップの定義は監督やチームの方針などによっていろいろと変わるから面白い。導入記事では現町田ゼルビア・コーチの山中氏の定義「ハーフウェーラインを越えるまで」は具体的でわかりやすい定義である。現町田ゼルビアユース監督の中山氏(山中氏とは漢字が異なる)は「スペースを意図的に使いながら、人とボールを確実に相手コートへの前進させること」。抽象化したほうがいろいろと使いやすいのは理解できるが、いろいろと解釈でき、幅もありそうではある。現コンサドーレ札幌の岩政監督の「自分たちのゴール前から相手のゴール前にどう持っていくか」にも言える。自分たちとのゴール前とはどこからを指すのか。自陣ボックス内のことなのか。更にはGKの立ち位置で変わるようにも受け取れる。
・ビルドアップの目的はゴールに限らない
・あえてゴールを目指さずに、ボールをもって落ち着く時間を作ること
グアルディオラが率いるマンチェスターシティは、本日時点でプレミアリーグ4位。多少?苦戦を強いられていることから、従来型と呼ばれるポジショナルプレーが難しくなってきているようにも受け取れると続く。そういう意味では、2位アーセナルのデータは示唆に富む(ゴールキックをロングで蹴っている割合:約51%)。
アーセナルは大別すると混合型。相手が来るなら蹴る。相手が来ないならつなぐ。戦術的な傾向は流転するのでそれを進化と呼ぶのか、単により戻しととらえるのか。特集ではJ1リーグにも言及している。今季のレイソルはリカルド・ロドリゲス監督の戦術がフィットしているように映るものの、希少な派閥とのこと。環境、特に各国リーグやチームなどが変われば当然採択すべき戦術も異なってくる。現在レイソルは2位(2024年度は17位フィニッシュ)を踏まえると、J1リーグでは希少な派閥も悪くないように思う。特にゴールキックからのビルドアップ。新規加入したGK小島(元アルビレックス新潟)の足元の技術が前提だが、開幕戦からかなりの間、ロングパスではなく深い位置からのショートパスを選択しビルドアップしている。最近の試合はロングもみられるようになったが、GKからのビルドアップもやり方次第では効果的である。
ただし、これがアタッキングサードでのポゼッションにつなげることができるのかが重要な視点のように思われる。これがすっぽりと抜け落ちていることがあるからだ。いくらビルドアップしても相手にとって脅威とならなければゴール、その先の勝利には当然つながらない。
続く